【電車釣行】2020年6月 野岩鉄道で行く 会津高原・荒海川でテンカラ釣りと地酒・花泉

【電車釣行】2020年6月 野岩鉄道で行く 会津高原・荒海川でテンカラ釣りと地酒・花泉

プロローグ

新型コロナウイルスの影響により延期となっていた日本プロ野球が、例年より約3ヶ月遅れて6月19日に開幕しました。

また、この日は都道府県をまたぐ移動自粛要請が解除となっていて、ウィズ・コロナのステージでは自粛より自衛が肝要との風潮に変化して来ていることもあり、例年、球春とともに到来する渓流シーズンもようやく本格的な開幕の運びとなりそうです。

今季初の渓流電車釣行は、福島県の会津高原・荒海川です。

荒海川は、野岩鉄道の会津高原尾瀬口駅の近くを流れており、徒歩でのアクセスが容易です。

会津高原尾瀬口駅は、尾瀬観光の福島県側の玄関口ともなっていて、駅の周りには食堂や物産店、温泉があります。

当日の6:00ごろ自宅を出発しますが、生憎の雨模様。快晴の夏日であった前日とは打って変わり、気温がぐっと下がって湿気寒の様相を呈しています。

上は薄手の長袖シャツ、下は水着にタイツという真夏のウェットウェーディングスタイルで家を出てしまい、防寒対策が不十分であったことが少し悔やまれます。

目的地に向かう東武鉄道の車内には、感染拡大防止策として僅かに開いている窓の隙間から冷たく湿った空気が流れ込んできます。

マスクで顔だけは暖かいものの、薄手の長袖シャツでは堪え難い全身の寒さのため雨合羽を羽織って凌ぎましたが、今後も、国土交通省の謳うコロナ時代における公共交通機関の新しい利用スタイルの実践に協力する場面は多くありそうです。

8時16分。下今市駅で特急リバティ会津101号に乗り換えます。事前の下調べでは、コロナの影響で運行していないと思っていたのでこれはラッキーです。現地への到着時間が1時間近く早まりそうです。

特急リバティは、会津田島駅行きのリバティ会津と、東武日光駅行きのリバティけごんの2種類が運行しています。

全席座席指定ですが、日光・鬼怒川エリアの周遊の利便性を高めるため、下今市駅以北(下今市~会津田島、下今市~東武日光)のみ利用の場合に限り、特急券なしで乗車出来ます。

ただし、乗車券のみで乗車の場合は、空席には座れるものの、座席が確保されないので、該当する座席の特急券を購入したお客さまがいた場合は、当然ながら座席を譲る必要があります。

乗車すると、十分な空席があり、無事に座席を確保することが出来ました。さすがは特急というべきか、ゆったりとした座席と暖かな車内温度が快適です。また、座席にはコンセントがあり、スマートフォンの充電が出来るのはありがたいです。

車内はグループの方々の陽気な話し声で溢れていました。少しずつですが経済が動きつつあるのを肌で感じます。

周囲の喧噪をよそに単独釣行の私は至福の読書タイム。

今日の旅のお供に持参したのは、北村薫先生の「八月の六日間」(2016年/角川文庫)です。

北村先生といえば「日常の謎」をテーマとするミステリが得意分野というイメージですが、この作品にミステリ的要素はありません。極論すれば、主人公の編集者の女性が山に登るだけの物語です。

しかし、普段は仕事を頑張る魅力的な主人公が、日常において抱える苦しい気持ちから解放されるために山に行く、というのは大いに共感できるところ。山という非日常空間で、それぞれに魅力的な人々との刹那的かつ爽やかな邂逅には憧れの念すら抱きます。

また、山に欠かさず本を持参し、「本ないと気が狂うんです」とのたまう主人公の気持ちが私にはよくわかります。

読むたびに微かな胸の痛みを覚える名作です。

途中、作品に完全に没入していましたが、9時30分頃に会津高原尾瀬口駅に到着。

道中の寒さが嘘のように、現地は快晴でした。

蜩が鳴き風が心地よい初夏のノスタルジックな空気感が本日の良果を妄想させます。

駅の改札を抜けると正面やや左寄りに連絡通路の入口があります。

通路の階段を降りると、左手に売店・お食事処「憩の家」があります。

計画では渓流魚をサクッと釣り上げて記念撮影をした後、昼食にお食事処で名物?の「三種合体麺」を食し、お土産に地酒「花泉」を買って帰る算段です。

渇いた喉を潤すため、まずはその「憩の家」の売店で缶ビールを買います。

次にやることは日釣り券の手配です。当エリアの管轄漁協は南会東部非出資漁業協同組合ですが、コンビニ端末やスマートフォンアプリでの日釣り券の取り扱いがない(2020年6月現在)ため、現地での購入となります。

近くにある「御宿 夢の湯」で日釣り券の取り扱いがあります。

「憩の家」から「御宿 夢の湯」に向かう途中に「恋路橋」という橋があります。

この「恋路橋」ですが、南会津町の観光パンフレットによれば「恋の隠れパワースポット」なんだそうで、「橋の欄干に赤い紐を結ぶと恋が叶う」と言われているらしいです。

まあ、現在の自分には全く関係ない情報ですが。

その恋路橋を渡って夢の湯へ。

10:00の営業開始より少し早く到着したので、先ほど購入した缶ビールを煽りつつ玄関前で待ちます。

遠くに空の青と雲の白、山の濃緑を眺めながら煽る缶ビールは浮世離れした爽快さです。

10:00ちょうどに入館し、窓口で日釣り券を購入。料金は1050円です。

夢の湯は500円で日帰り入浴の営業もある(大広間の利用15:00まで)ので、首尾良く魚が釣れた暁には、疲れを癒やすべくこちらにも寄るつもり。

荒海川本流 三滝温泉下

まずは荒海川本流を探ります。

夢の湯から徒歩5分ほど下流方向にある小滝橋付近から入渓します。

斜面がやや急なので、木に掴まりながら慎重に下降し、川岸にアクセスします。

少し上流に遡行すると、目の前に大小3本の滝が現れました。

滝に正対する自分の右上方、滝を見下ろす位置に旅館三滝温泉の建物が見えますが、既に営業を終えて幾許かの時が経っているようです。

水の透明度はかなり高く、滝よりやや下流のポイントでは、おそらくヤマメでしょうか、20㎝ほどの渓流魚が5尾ほど、群れをなして泳いでいます。

当日の朝、テンカラ大王こと石垣尚夫先生の書籍を参照して巻いた毛バリ「バーコードステルスもどき」をパイロットフライとして選択し、投げ縄結びでハリスに結びます。


超明快 レベルラインテンカラ

毛バリを替えて試すも反応は変わらず、そのうち毛バリに全く見向きもしなくなってしまいました。

これは魚が相当スレているようです。

すぐ上の滝壺のポイントでは、ビーズヘッドを付けた沈む毛バリで粘りましたが、こちらは全く反応なし。

時間は徒に過ぎ、昼食時となっていました。

当初思い描いていた計画では、既に釣りを終えて三種合体麺に舌鼓を打っているはずでしたが、完全に当てが外れました。

本流を諦め、行動食として持参したカロリーメイトと板チョコを昼食代わりに栄養補給したのち、1.5㎞ほど上流の分木ノ沢を目指します。

分木ノ沢

分木ノ沢出合付近のポイント

水流は細く、ナメ床と大小の石で形成された渓相にポイントらしいポイントはほとんどありませんが、時折浅場に小イワナが走るのが見えます。

数百m遡行したところで大きな倒木が流れを跨いで横たわっていました。乗り越えた先に好ポイントが待っているとも思えなかったので、ここで引き返すことに。

倒木に行く手を阻まれ遡行を断念

鎌越沢

沢に沿って舗装された道がついており、沢の様子を覗うことが出来ます。

分木ノ沢より若干水量が多く、ポイントを覗き込むとイワナが岩の隙間に潜り込むのが見えました。

時刻は既に16:00を廻っており、心中穏やかではありませんでしたが、一縷の望みを託して入渓。

釣り番組のナビゲーターさんはロケで釣れない時にこのような気持ちになるのでしょうか?

500mほど進むと小さな滝が現れました。駅前広場の看板で「仰行滝」と表示されていた滝のようです。

仰行滝

時は夕まずめで水面には羽虫が舞い、魚が羽虫を捕食するために時折ライズしています。最後の最後、遂に好機が訪れたようです。

手持ちの水に浮きやすい毛バリ(市販)をチョイスし、投げ縄結びでハリスに結びます。

これが本日のヒット毛バリとなりました

しかし、頭上には木が覆い被さり、川幅も狭いので、縦にも横にも竿を振るスペースがありません。

そこで、レベルラインとハリスの結び目を指でつまみ、それを弓を引くように引っ張って竿を撓め、つまんだ指を離して竿の反発で毛バリをポイントに送り込みます。

いわゆる「矢引き振り」のキャスティングです。

すると、何としてもの思いが天に通じたか、水面に浮いた毛バリ目掛けて魚が躍りかかるのが見えました。

この沢にいるのがイワナであることは先ほど確認しています。

イワナのアワセは遅アワセと心得ているので、魚が水面を割って出た瞬間から一呼吸置いて竿を煽ると、狙い通りに魚の手応えが竿に伝わってきました。

がっちりと毛バリを咥え込んでいます

直後、撓んだ竿の反動で魚体が水面からごぼう抜きされ、ようやく待望の1尾を手にすることが出来ました。

体長はおよそ17㎝

メジャーを当てると約17㎝。小物ですが、大苦戦の末の唯1尾の釣果に胸を撫で下ろします。

記念撮影の後、感謝と共に丁重にリリース。

興奮が少し落ち着いてくると、途端にお腹が空いていたことを思い出します。

昼に食べそびれた「三種合体麺」を早めの夕食として頂くため、急いで「憩いの家」に戻りましたが・・・。

エピローグ

「憩いの家」内の食事処「恋路茶屋」は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、当面の間10:00~15:00(オーダーストップ)の短縮営業を実施中でした。

行き掛けに確認しておくべきだったと悔やんでも後の祭りです。

仕方なく売店でカップ麺を買い、お湯を頂いて待合スペースのベンチで食すことに。

「三種合体麺」は次回の楽しみに取っておくこととなりました。

帰りの列車は18:09発の特急リバティ会津150号です。

ところで、売店の方に教えて頂いたところによると、駅の窓口は既に閉まっているとのこと。

行き掛けに窓口で指定席の空席情報を教えて頂いた感触では、満席の心配はなさそうだったため帰りの切符は購入しておらず、一瞬焦りました。

しかし、切符は車内で購入出来るとのことでほっと胸を撫で下ろします。

到着10分前に連絡通路を昇って駅のホームに出ると、反対側の会津田島方面行きのホームには、快速AIZUマウントエクスプレス5号がすれ違い待ちのため停車していました。

首都圏では見かけないレトロな赤の車体は、鉄道ファンの興味を惹き付けるのに十分な趣を感じます。

実際、鉄道ファンと思しき若者が車内外をくまなく撮影していました。

やがて、時刻通りにリバティ会津150号が到着。

座席の確保は問題なく出来ましたので、電車釣行最後のお楽しみとして車内居酒屋を敢行。

売店で購入しておいた福島の地酒「花泉」のカップと、酒肴の「馬刺しチップス」(380円也!)を座席前方のテーブルに並べます。

本日のヒットシーンを脳内リピートしつつたしなむ「花泉」は、いつもにも増して甘美な味わいでした。

(終わり)

釣行データ・関連リンク

南会東部非出資漁業協同組合

会津高原尾瀬口駅 憩の家

御宿 夢の湯

電車で行く渓流テンカラの旅