【電車釣行】2020年8月 上越線で行く 群馬県・湯桧曽川でテンカラ釣りと赤城牛ステーキ
プロローグ
今般、巷では芸人のヒロシさんの影響等もあり、ソロ・キャンプが注目されているようです。
周りに合わせることなく自分のペースで楽しめるのが大きな魅力とのことですが、電車でソロ・フィッシングをしている時の自分の思考回路も割とよく似ている気がします。
いつか電車で単独の釣りとキャンプをやってみるのも面白そうですが、キャンプ装備を背負っての釣りはさすがに大変かな・・・。
ところで、子供たちの短い夏休みは終わりましたが、私は最後に単独の電車釣行のための予定日を確保していました。
今回の目的地は、群馬県みなかみ町を流れる湯桧曽川です。
早朝に自宅を出発して最寄り駅の始発に乗車。乗り換えてJR高崎線に乗車し、さらに高崎駅でJR上越線に乗り換えます。
世間は平日ですので、高崎駅から沼田駅にかけては通勤通学の乗客が多い印象です。
自分で車を運転せずに済む電車釣行において、私は「読書」を楽しみの1つにしています。
今回は三島由紀夫先生の「文章読本 新装版」(三島由紀夫著/中公文庫/初版1973年)を持参しました。
ブログを始めて2年、一向に上達しないライティング・スキルを少しはましなものにしたいと思い、名著の誉れ高い本書を読み進めてはみたものの、到達点への道のりは果てしないと再確認しややテンションが下降・・・。
ましてや三島先生のような絢爛豪華な文章で物語を紡ぎ切るのは夢のまた夢です・・・。
しかし、この「文章読本」で著名な文豪たちの卓越した文章技巧に触れることが出来、また先生が尊敬するという文章の「格調と気品」についての意識を持つことが出来たのが大きな収穫でした。
文章読本-新装版 (中公文庫 (み9-15))
後閑駅あたりから、車窓の風景は青い空と濃緑の山々が一層美しく、観光ムードが高まってきます。窓越しに動画を撮影している人たちも何人かいました。
水上駅で長岡行の上越線に乗り換えますが、この時に車掌さんにお願いして現金精算。このあたりの手順は昨年の新潟・毛渡沢釣行で確認しています。
湯桧曽川の釣り
8時32分、時刻通り湯桧曽駅に到着。駅は無人です。
駅舎を出ると、明瞭な空の青と山の緑が目に眩しく、全方位で夏蝉の合唱が響き渡っています。
降り注ぐ陽光はまさに盛夏の趣ですが、一方で梢の葉叢を揺らす涼やかな風は心地良く、都市部のような不快な暑さは感じません。
歩き始めてすぐ、湯桧曽橋から望む美しい渓相にしばし目を奪われます。
天空の湯 なかや旅館
湯桧曽橋を渡って少し進むと、右手に見覚えのある「天空の湯 なかや旅館」がありました。
10年以上前、長男が幼少のころはまだ小さい子供連れのファミリーを歓迎してくれる旅館は少数派でした。
なかや旅館は子連れファミリー歓迎の方針をいち早く打ち出していたので、当時慣れない子育てに奮闘していた家内の慰安のため利用させて頂いたのですが、細部まで行き届いたサービスに感嘆したのをよく覚えています。
とりわけ、焼きたてふわふわの食パンを1本(3斤分)丸ごと朝食時に無料で提供してくれる「なかや 春のパン祭り」が印象的でした。
当時は車で訪問したので気が付きませんでしたが、湯桧曽駅に程近い立地で、電車での旅行もとても便利なようです。
「天空の湯 なかや旅館」のご予約はこちら日釣り券について
さて、まずやることは日釣り券探し。湯檜曽川を管轄しているのは利根漁業協同組合です。
なかや旅館から少し進むと「日鑑札取扱」の幟旗を掲げている理髪店がありました。
本業のお仕事がお忙しいところを邪魔するようでちょっと恐縮しつつも、無事購入することが出来てほっと一息です。
お店の女性から教えて頂いた主な入渓点は2カ所。足湯の近辺と、伊東園ホテルズ傘下となった「ホテル湯の陣」の手前とのこと。
足湯近辺
まずは足湯の近辺から入渓。
流れは平坦ながら底石が多くポイントは豊富にあります。
入渓しやすいうえに透明度が極めて高いので、魚はかなりスレていると思われます。
基本的なことですが、アプローチには細心の注意を払う必要がありそうです。
逸る気持ちを抑えつつ、愛竿のシマノ「渓流テンカラZL3.4-3.8」に仕掛けを接続。
メイホウ(MEIHO) 丸型仕掛巻ちびまる70ところで、この「渓流テンカラZL3.4-3.8」は、扱いがやや難しいレベルラインをスムーズに飛ばすために6:4の胴調子に設計されています。竿のネジレやブレを抑えるシマノ独自の設計・製造方法である「スパイラルX」を採用していて、初心者でも短時間で狙ったポイントにスムーズに毛バリを打ち込めるようになると思います。
仕舞寸法が70.5㎝と電車釣行時にはやや長いと感じるものの、様々な渓流域をこれ1本でカバー出来るとても良い竿だと思います。
シマノ 渓流テンカラ 38ZL扱いがやや難しいレベルラインをスムーズに飛ばすために6:4の胴調子に設計されています。竿のネジレやブレを抑えるシマノ独自の設計・製造方法である「スパイラルX」を採用していて、初心者でも短時間で狙ったポイントにスムーズに毛バリを打ち込めるようになると思います。
フィールドでの体感温度は既に35℃を優に超えている感覚なので、魚も涼しいところのほうが良かろうと考え、まずは日陰の瀬にいつもの毛バリ「バーコードステルスもどき」を投入し、水面のやや下を流します。
すると、水面を割って出るような派手なアタリではないものの、水中で魚が毛バリを引っ張ったような感覚が竿から伝わってきました。
半信半疑だったためアワセずに静かに毛バリをピックアップしましたが、やはりどうも魚のようだとの思いを強くします。
魚が毛バリを咥えていたのだとしたらもう掛からないかなと思いつつ、再度同じポイントに毛バリを流します。すると・・・。
また先ほどと同じように水面下で魚が毛バリを引っ張ったような動きを感じたため、今度はシャープに竿を煽ります。
次の瞬間、竿が軽く曲がって重みを感じ、魚が水面に引き出されました。
水面を小躍りしながら手元に寄ってきた小振りな渓流魚は、初心な小ヤマメでした。
おそらく放流されて間もないのでしょう。
ともあれ、いつもと違い幸先よく1尾をキャッチ。モデル探しの労苦からはいち早く解放されひとまず胸を撫でおろします。
タモ網で掬い取り、その美しい姿を記念撮影します。
その後、なるべく魚体に触れないよう慎重に毛バリを外してリリース。
颯爽と流れに消えてゆく彼女を見送ります。
魚に与えるダメージが少なくて済むのがテンカラ釣りの長所の1つだと思います。
ここまでの釣行の様子を動画にしてみました。
(渓の翁・瀬畑雄三氏とテンカラ大王・石垣尚男先生出演の「TENKARA」はテンカラファンにとって一見の価値ありです👇)
「ホテル湯の陣」近辺
一旦道路に上がり、「ホテル湯の陣」に向かう橋の手前の左岸から再度入渓。
「ホテル湯の陣」のご予約はこちら開豁なフィールドで存分にテンカラ竿を振ることが出来ますが、この区間では魚信はなし。赤沢出合の堰堤下まで釣って退渓。
赤沢出合の堰堤上部は川遊びスポットのようで、ファミリーやカップルで賑わっていました。
赤城牛ステーキ
計画ではここから国道291号を歩いて土合駅に行くはずでしたが、赤沢出合付近に関越交通のバス停があるのが目に留まりました。
時刻表をみると、幸運にもちょうどバスが到着するようです。
猛暑の中重い荷物を背負って3㎞ほどの道のりを歩くのは少しきついなと思っていたので、これは助かりました。
定刻からやや遅れて到着したバスの後部ドアから乗車し、整理券を取って着席。乗客は私1人です。
車内の快適な冷房に一息つく間もなく土合駅に到着。料金は260円でした。
土合駅よりやや手前に「谷川岳ドライブイン」があります。こちらで昼食を取ることに。
こちらの人気No.1メニューは「赤城牛ステーキ」です。税込1980円はややお高めなれど、食べてみたいとの誘惑には勝てずにオーダー。
肉が焼き上がるまでの間、缶ビールを堪能。いきなり骨抜き。私にとってはこれが電車釣行の一番の醍醐味です。
ようやくメインディッシュの登場。
溶岩石の上にスライスされたタマネギが敷かれ、その上に肉汁の滴る赤城牛が満載されています。
早速賞味してみると、柔らかな肉が軽い咀嚼で簡単に溶けてゆきます。
ステーキを食べ慣れていない私はお肉の質を判断する舌を持ち合わせてはいませんので、客観的にこのお肉が上質なのかどうかは全く分かりません。
しかし、陽光に灼かれながらテンカラ竿を振り続けた後に空腹の極みの状態で味わう赤城牛は、私にとっては缶ビールともども天に召されるかと思うほどの快楽でした。
エピローグ
昼食後、土合駅付近のポイントを探るもアタリはありませんでした。
結局今日も出会えた渓流魚は1尾のみでしたが、出会えたので十分満足です。
最後に、「日本一のモグラ駅」との触れ込みの土合駅を見学。
観光パンフレットによると、土合駅は「一生に一度は訪れたい駅」の第1位なんだとか。
また、観光経済新聞によると、この土合駅にて無人駅グランピング施設「DOAI VILLAGE」の宿泊施設開業が予定されていて、さる8月8日には駅舎内喫茶「mogura」をオープンしたとのこと。
私が訪問した時には営業している感じではありませんでしたので、調べてみるとどうやら不定休のようです。これは残念。
運営会社は、「無人駅の活用に高いニーズがあることが確認できた」として、今後も無人駅などの遊休資産を活用した新たなツーリズム開発とワークスタイルの創出に向けたサービスを生み出していくとコメントしています。
これは私も含めアウトドア志向の旅行者にとって非常に楽しみな流れではないかと思います。
下り線のホームに向けて、486段の階段を降りていきます。歩を進めるにつれて、段々と気温が下がっていくのが分かります。
10分ほどかかってようやくホームに降り立ちました。
涼しいを通り越して寒いくらいです。地上との気温差は20℃くらいはありそうです。
地上に戻るため486段を上り返しますが、これはかなりきつかったです。
途中にベンチが設置されているのも納得です。
予想を遥かに超える階段の昇降のきつさにやや辟易しつつ時計を見ると、帰りの列車到着までもうあまり時間がありません。
急いで地上の上り線ホームに出ると、地底の下り線ホームの冷涼な空気が嘘のように、未だ衰えぬ午後の陽光が容赦なく降り注いできます。
ホームに天蓋はありません。頭上の陽光と足下からの反射熱に軽い眩暈を覚えましたが、程なく、山の緑の下を這うように上りの上越線が姿を現しました。
(おわり)