【渓流釣り】2024年6月 群馬県西俣沢 幕営釣行にチャレンジしてみた
【プロローグ】
渓流釣りを始めて30年近く経っていますが、未だ幕営釣行というものをやったことがありませんでした。
私は以前から興味があり、釣り友のサクラダさんとナカガワさんに幾度となく秋波を送ってみた(美人の流し目ではありませんが・・・)ものの、「野宿はあり得ない!」「やっぱり夜は布団で寝たい!」とつれない回答をもらい続け、さりとて完全アウェーの状態でどこかの山岳会の門を叩く勇気もなく、見果てぬ夢で終わるものと覚悟しつつ現在に至っていました。
ところが、ナカガワさんがどういう心境の変化があったのか、突然「沢に泊まってみたい!」と言い出す奇跡が起き、私は二つ返事でOK。
斯くして今回の幕営釣行が実現することに。
【事前準備と結果の検証】
- 場所の選定
ナカガワさんがホームグラウンドとしている群馬県片品村の塗川支流西俣沢としました。
理由は、国土地理院の地図で見る限り川沿いに林道があるため溯行が容易で、林道の終点付近での幕営が可能ではないかと読み取ったからです
林野庁のホームページで国有林の森林計画図を参照したところ、流域一帯は国有林ではなく、幕営に特に支障はなさそうです。
なお、国有林への入山時には、原則として、入林先の国有林を管轄する森林管理署・森林管理事務所へ入林届の提出等の事前手続きが必要になるようです。
遭難のリスクは極めて低い計画であると思われたため、登山計画書は家族に託すに留めました。
結果としてはこの見通しはかなり甘かったようで、途中から明瞭な道は姿を消してしまい、背の高い藪に覆われた微かな踏み跡を辿る羽目に。
さらに私が担当していた地図の用意が杜撰で、ネットからコピーした国土地理院の25000分の1地図をシームレスにつなぎ合わせず途中の位置のページを省いたため、現在地点が分からなくなるという大失態。
縮尺の関係で、旺文社の山と高原地図ではカバー出来ませんでした。
目的地までの溯行は諦め、予定よりもかなり下流での幕営となりました。
- リュック購入と使用感
1泊2日の幕営釣行釣行に必要な容量は40リットルくらいと推測、mont-bellのクライムサワー40を購入。
感想としては、おそらく私のパッキングスキルが拙かったのでしょう、やや容量不足という印象でした。
いくつかのアイテムを外付けしたり、別途ワークマンで4リットルのポーチを購入して小物を収納するなどの工夫が必要でした。
ナカガワさんは50リットルのリュックを使用していましたが、外付けなどは不要だったようです。
- タープ購入と使用感
渓での睡眠のため当初はツェルトの利用を想定しており、購入もしましたが、元来のものぐさな性格から設営が面倒と感じ方向転換。
タープの下にマットを敷き、その上でシュラフとシュラフカバーを使って眠ることに。
購入したタープは、おそらくタープ派の定番と思われる「アライテントビバークタープL」でした。
当初は二人での幕営には大き過ぎるかなとも思いましたがさにあらず。
屋根のある広いリビングスペースはなかなか快適でした。
タープ設営を無事完了したところで、まずはビールで乾杯。
その後、タープの下で昼食。
メニューはナカガワさんに用意してもらったパスタ。
また、タープ設営のためにmont-bellで直径5㎜×20mの細引きと呼ばれるアクセサリーロープを購入。
かつて、今はなき登山用具の名店「秀山荘」で本格的な登攀用の8㎜×30mのダイナミックロープを購入し、いつ来るかも分からない来たるべき日に備えて自宅で懸垂下降の練習をしていたことがあり、そちらのロープの使用も考えましたが、今回はロープを使用するような難所の溯行を想定していないことと、このロープが重いことから、細引の購入に至りました。
自宅の書棚に眠っていた「山と釣り ようこそ、源流へ」(地球丸 2016年)を参考に、タープ設営のためのロープワークを研究。
すると、「ひばり結び」やら「フレンチ結び」やら「フリクションノット」など意味不明の用語が次から次へと出てきました。
これは同じく書棚のインテリアと化していた「DVDで覚えるロープワーク」(羽根田 治 著・監修 山と渓谷社 2012年)を引っ張り出し、該当部分をカラーコピーして現地に持参することでクリア。
また、輪になったスリング4本と小型のアクセサリーカラビナ4個を用いてタープをピンと張れるとのことでしたのて素直に購入。
確かにピンと張ることは出来ましたが、高価なスリングではなくビニールひもなどでも十分なのではというのが正直な感想です。
しかし、想定外の用途ではありましたが、焚き火用の薪の運搬には大活躍しましたので、あってもよいアイテムだなとは思いました。
また、就寝時の顔の防虫が最大の心配事でしたが、服部文祥さんの書籍「サバイバル登山入門」(服部文祥 著 株式会社デコ 2014年)を参考にシュラフカバーをアタマまですっぽり被り、カバーのひもを引っ張ってカバーの口を閉じ、空いている隙間に菓子作り用の小さなザルをセットするという方式を採用しました。
これは正解で全く虫に悩まされることはありませんでしたが、ツェルトを利用してパーソナルスペースを確保したナカガワさんも快適な夜を過ごしたようです。
- シュラフ&シュラフカバー&マット購入と使用感
自宅と幕営予定地の標高差は約1400メートルあり、自宅付近の最低気温15度と仮定しました。ここから標高100メートル上がる毎に0.6度気温が下がるという公式を当てはめると8.4℃マイナスの6.6℃となりました。これに沢沿いであるということを加味すると、もう少し気温は下がると想定。
ここから、mont-bellのダウンハガー♯3をチョイス。快適な使用温度は3℃で、-2℃までの使用に耐えられるようです。
ただし、今後継続的に使用するか不透明な状況でいきなり値段お高めの最新モデル(シームレスで快適そうです)を購入する勇気はありませんでした。
某フリマサイトに丁度良い中古品が出品されていたので、そちらを22000円で購入。良い買い物が出来ました。
また、ダウンのシュラフは水に弱いとのことで、釣行日には降雨が十分に想定されることから、シュラフを保護するmont-bellのシュラフカバーを購入。
こちらは新品で購入。暑いときはシュラフカバー単体での使用が可能であることが購入の決め手となりました。
マットはサーマレスト「Zライトソル(S)」をチョイス。
地面の冷気を遮断するために使用する折り畳み式の厚手のマットです。
蛇腹式で空気を入れる必要がなく、手軽に使えるのがメリットですが、やや嵩張るのが難点。
広げたとき時の寸法は50㎝×130㎝。横になると足がはみ出します。ということは下半身が冷えることが想定されます。
対処法として、キャンプ指南書等ではザックに足を突っ込む方法などが紹介されていましたが、私は単にズボンと靴下を厚手のものにすれば良いのではないかと考え、そちらを実行。この方法で特に冷えは感じませんでした。
トータルで使用した感想は快適そのもの。
予想した通り6月の渓の夜は凍えるような寒さでしたが、長袖の丸首シャツ1枚と厚手のズボン&靴下でシュラフにもぐり込むと、重い荷物を背負っての藪漕ぎの疲れと宴の酒も手伝い、あっという間に眠りに落ちました。
(ナカガワさんには寝るの早すぎと怒られましたが・・・)
【釣りについて】
平日に休暇を取得して行う幕営釣行です。
釣り雑誌やYouTube の世界で目にするのは、まさに山上の楽園、イワナパラダイスのオンパレード。
当然自分たちもそのイメージしかありません。
一体何匹釣れてしまうのかと期待に胸膨らむ往路でした。
しかし、楽園はもっと遠くにあるらしく、私たちが竿を出したポイントでは期待していた状況は訪れませんでした。
美しい渓相が逆に恨めしいという感覚。
しかし、山の神様がさすがに気の毒と思ってくれたのか、ナカガワさんの竿に25㎝程のイワナを1尾授けてくださいました。彼は普段の行いが良いのでしょう。
ちなみに私はまだ徳積みが足りないようで収穫を享受することはなく、それどころかヘツリ時に足を滑らせ釜に落水・・・。
足の着かない深さで焦りましたが、岸の岩のわずかな凹凸に必死にしがみつき、何とか脱出。
一部始終を笑いながら眺めていたナカガワさんは、「もう少し下流に流れていけばすぐ浅くなったのに~」と言っていましたが、もちろん当の本人にそんなことを考える余裕はありません。
常に万一の落水は想定してウェーダーではなくウェットウエーディングスタイルではいるものの、泳ぎを楽しむには早過ぎる冷水に体もココロも冷やされる始末。
低体温症が心配になり、あえなく釣り終了。
焚き火について
幕営地到着直後、タープ等設営とともに薪を拾い集める作業も済ませておきました。
ちなみに薪の運搬にはタープ設営用に購入した輪になったスリングを使用し、一度に多くの薪を運搬することができ、作業がとても捗りました。
ナカガワさんに火を熾してもらい、その間に私は落水で濡れた衣服を脱いでタープを張った細引の端に掛け、リラックスウェアへ着替え。
沢での焚き火は木を井桁に組まずに平行に並べるのがコツだそう。
ナカガワさんは相当の予習を重ねていたらしく、短時間で見事な炎が示現。
惜しむらくは、その炎に焼べる塩焼き用のイワナが存在しないことですが・・・。
夕食について
- イワナの刺身
唯一の収穫物である1尾のイワナは刺身でいただくことにしました。
私は魚料理の担当を任されていたため、書籍でイワナの捌き方や料理方法について学習していました。
ちなみにナカガワさんには米炊き担当をお願いしています。
前日によく研いでおいたフォールディングナイフを使い、ハラワタとエラを取り出します。ハラワタは別に料理するため捨てずに取っておきます。
次に背骨の血合いの処理です。
親指の爪を使って血合いをこそげ落としながら沢の水で洗い流します。
水を使って良いのはここまでで、薄手のタオルを使って身の水分を拭き取ります。
その後、頭の後ろあたりと尾のすぐ手前、および背中の皮に切れ込みを入れ、皮を口でくわえて頭から尾の方向に皮を引いていくと、きれいに皮を剥ぐことが出来ました。
その後、牛乳パックのまな板の上で身を3枚におろして小骨をそぎ、食べやすい大きさに切り分け、近くに生えていた大きな葉っぱに盛り付けて完成。
鮮度抜群のイワナの刺身の味は感動的でした。
- ホルモンのポン酢和え
捨てずに取っておいた胃と腸から内容物(虫などです・・・)を取り出してよく洗い、コッフェルで沸騰させたお湯に投入、1分ほど湯がくと身が白くなります。
これをさっぱりとポン酢でいただいたところ、柔らかくもコリコリとした食感がかなりの美味。
是非また味わってみたいと思えるクオリティでした。
- イワナの骨酒
残った頭と骨と尾びれを焚き火で焼き、こんがり焼けたところでシェラカップに移し、そこに500mlペットボトルに移し替えて持参した「ワンカップ大関」を注ぎ、エキスが十分に染み出した頃合いを見計らってドリンク。
焚き火を眺めながらイワナの骨酒をゆるゆるといただく渓の酒宴は、酔いを誘うのに十分過ぎるほどの雰囲気を醸し出していましたが、肝心の味のほうは、お酒の温度が中途半端でイワナの美味しさを十分に引き出せなかったというのが正直な感想。
お酒は少しお燗をして注いだほうが良かったかもしれません。
【エピローグ】
夜半の雨音も意に介せず快適に眠ることが出来ました。
すっかり米炊き名人と化したナカガワさんの炊いた白米プラス缶詰の朝食で気力充実、タープ以外の荷物をまとめ、朝マヅメの釣りを敢行。
幕営地のすぐ近くのポイントでまたもナカガワさんが良型をキャッチ。
2日目はイワナ料理の予定はないのでオールリリースですが、幸先の良いスタート。
しかし、その後2時間ほど釣り上がるも反応はありませんでした。
退渓のため沢を下る途中には、当日入渓した2組の釣り人の方たちに遭遇。
そういえば今日は土曜日であることを思い出しました。
うち単独遡行のベテランの方の風情はもはや完全に沢ヤで、「今日日(きょうび)の釣り人は岩登りもできなくちゃね!」とのことでした。
現在の自分にはソロも岩登りもキビシイです・・・。
肩を落としながら退渓し、よく整備された林道に到達、ゴールの駐車場まではもう残り僅かです。
楽しかったものの自分は釣れなかったという微かな悔しさを残しつつ、未練たらたらで付近の堰堤の上から下の水面を覗くと・・・。
透明度の高い水面下に、10を超える数の型の良いイワナが悠然と泳いでいるのが見えました。
しかし、昔からよく言うように「見える魚は釣れない」のがセオリー。
内心「無理だろうな」と思いつつ、やはり釣れたとはいえ2尾では飽き足りなかったナカガワさんと思いが一致し、この堰堤下で最後の一勝負をすることに。
気配を悟られないよう、下流から大きく回り込み、極力姿勢を低くしてアプローチ。
長めの仕掛けを竿にセットし、ポイントに届く遠めギリギリのキャスティング位置を選択しました。
毛バリは、石垣尚男先生のテンカラ講習会に参加した時に購入したバーブレスの黒い毛バリです。
レベルラインが水面を叩かないようていねいにキャスティング。
思い通り毛バリが水面にふわりと着水、すると次の瞬間・・・、
岩からスーッと静かに出てきた良型のイワナが毛バリを咥える瞬間を目視できました。
軽くアワせると首尾よくフッキング。
他の魚を散らさないよう一気に抜き上げ、ようやく今回の釣行の初釣果を手にしました。
遅きに失した感はありますが、釣れるとやはり嬉しいです。
結局、このポイントで私が3匹、ナカガワさん2匹と合計5匹の釣果。
最後の最後に魚の引き味も味わうことができ、トータルではかなり楽しい釣行となりました。
今回の反省点を生かし、涼しくなる秋にもう一度幕営釣行にチャレンジしてみたいと思います。
(おわり)
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