【渓流釣り】2019年4月 奥秩父の渓流釣り 大若沢&相原沢
プロローグ
2週連続の渓流釣り。今年はなかなか良い出だしです。
今週は中学時代からの友人ナカガワさん(仮名)と予定を合わせ、有給休暇を取得して埼玉県奥秩父の釣り旅に行って来ました。
ナカガワさんと私の志向する釣趣は似通っていて、彼はエサ釣り、私はテンカラという違いはありますが、ともに様々な生命感の溢れる美渓を軽快に釣り上がるスタイルを好んでいます。
釣行前日の毛鉤巻き
前日は例によって毛鉤を自作。
先週、フライショップで買った4ミリのビーズヘッドを付けた毛鉤で、栃木・大谷川のヤマメが釣れました。しかし、このビーズヘッドは1袋900円と中々に高額なため、代用品として100円ショップで6ミリの球形のビーズを購入しました。
これを#10のフライフックに通そうとすると、ベンドからシャンクへのカーブで引っ掛かり、アイの部分まで持ってくることが出来ません。
仕方がないのでラジオペンチで上下を慎重に押し潰したところカボチャのような形状になり、何とかビーズをアイの下に持ってくることが出来ました。
ハックルはコックハックル(ニワトリの羽根)を使いました。
スレッドはミシン糸です。レモンイエロー、ピンク、オレンジと暖色系を用意。
ヘッドとスレッドの色の組み合わせは、金+レモンイエロー、銀+ピンク、赤銅色+オレンジです。
かなり派手な見てくれに仕上がりました。この3種類の毛鉤をメインに使うことを想定し、毛鉤ケースに入れる毛鉤をセレクトします。
内心は釣果に色なんか関係ないんだろうなと思いますが、それでも色の組み合わせを考えつつ毛鉤を巻くひとときに幸せを感じます。
大若沢の釣り
例によって現地まで友人の車で連れて行ってもらう釣行です・・・。
ナカガワさんの住まいと私の自宅は現在それなりに離れており、さすがに自宅に迎えに来てとは言えません。荷物を出来る限りコンパクトにまとめ、始発電車で彼の住まいの最寄り駅に向かいます。
6:30頃到着し、すでにロータリーで待機してくれていたナカガワさんの車に乗り込みます。
目的地は奥秩父中津川支流の大若沢です。
沢の情報は沢登りのガイドブックが詳しいかと思い、「東京起点沢登りルート120(山と渓谷社/宗像兵一:編著/2010年)」で調べた結果、遊歩道が整備され沢登り初心者が沢登りを堪能できると紹介されていたこの沢を選びました。順調なら3時間程のドライブです。
天気が心配でしたが、懸念された雨は既に降り止み、明るく澄んだ青の天蓋が頭上に限りなく広がっています。
その青を背景とし、桜の薄紅や若葉の黄緑が車窓越しに目を楽しませてくれ、高揚した気分が根拠なく本日の良果を想像させるのでした。
3時間程で現地に到着。学習の森大若沢休憩所の駐車場には、釣りではなく登山の準備をしている方々がいました。
ご挨拶しつつ状況を伺うと、遊歩道が壊れていて通行が危険な箇所があるとのことでした。
もとより登山目的ではないので、危険を感じたら無理せず引き返すの一択です。
支度を調え、10:30頃から釣りはじめます。
久しぶりに歩く沢の景色は美しいの一語に尽きます。
金の頭を持つ虫の形をした異形の毛鉤を送り込む先の落込は翡翠色の水を湛え、水面は陽光が反射し銀の粒を散らしたように輝いています。
魚の付き場と思われる場所をエサを用いて丹念に探る友人を目の端に捉えつつ、私は毛鉤の二、三投でポイントを見切りながら軽快に釣り上がります。
これぞ沢釣りの醍醐味と悦に入ったのも束の間、肝心の魚が全く顔を見せてくれません。
途中、ロープを持った登山の方とすれ違いました。ご挨拶しつつ伺ったお話によると、どうも登山装備に関してほぼ丸腰の私たちがこのまま進むのは危険ではないかという思いが頭をもたげます。「君たち若いから大丈夫だよ~」とおっしゃっていただいたものの、その根拠は多分その方から見ると私たちが少しは年下に見えるというだけのものであり、言葉を鵜呑みにするととんでもない目に遭いそうです。事実私たちは全く若くはありません。
適当に切り上げて釣り場を替えるかということになり、遊歩道を下っていきます。
すると、駐車場まであと僅かという護岸の緩い流れにヤマメが餌を求めて定位しているのが見えました。
遊漁券(1800円)を買ったローソンでもらった秩父漁協の放流情報のチラシによると、中津川は前日に100㎏のヤマメを放流したようです。その放流ヤマメがたまっているのでしょうか。
魚は上流にいるとばかり思っていましたので、釣り始めた時は探りもせず通り過ぎた場所でした。灯台下暗しとはまさにこのことです。
3匹ほど、魚が流れに定位して食餌しているのが見えます。水面より少し高い位置では、小さな蜻蛉が数匹、綿毛のように方向感のない浮遊を繰り返しています。
魚はおそらくこれが落ちたところを狙っているのでしょう。
そのため、毛鉤を少し小さめの#14の蜻蛉を模したドライフライに替えて挑みます。
歩道の奥からロッドを延ばし、毛鉤を少し上流から魚の鼻先に流してやると、通常のように魚体を翻して毛鉤に躍りかかるのではなく、慎重に、ゆっくりと咥えてきました。
見えている魚がゆっくりと毛鉤を咥えるのだから、アワセはごく容易で、造作もなく毛鉤に掛けることが出来ました。
取り込んだヤマメは15センチほどでしょうか。
釣れたことは良かったですが、遊歩道から見える魚を覗き込んでの釣りは、今ひとつ釣趣には欠けます。
魚をリリースし、前半戦は終了とします。ここでの釣果は二人合わせてこの1匹のみでした。平日にしては中々に渋い。
学習の森休憩所の駐車場に止めた車の中で、コンビニで買ったおにぎりの昼食を手早く済ませ、次の目的地へ移動します。
目指すは、国土地理院25000分の1地形図を眺めて沢沿いに登山道があることが確認出来た相原沢です。
相原沢の釣り
現地に到着して登山道入口に立った瞬間に早くも誤算の予感がします。
案内板は登山道が急峻であることを告げるとともに、登山届の提出を促すポストが設置されています。
のんびり釣るという雰囲気では全くなさそうですが、危ないと感じれば直ぐ引き返すことを確認した上で、登山道を登ることにしました。登山道終点までは約3㎞の道のりとのことです。
登り始めて直ぐに、案内が大袈裟ではなかったことを思い知らされました。
地図の等高線の間隔が短かったことを考慮に入れなかったことに舌打ちしつつ、重力に逆らって体を持ち上げていきますが、1㎞ほど歩いたところでもう厭になりました。
水流は細く夥しい大岩と倒木で形成された渓相は決して美しいとは言えないものの、経験的にはこのような沢にイワナが生息していることは珍しくありません。
急峻な小沢と登山道とが近付いたため、ここから釣り始めることに。
しかし、渓を遡行するのは困難と思われたため、付近の連続する落込をいくつか探って撤退することにしました。
ここでは先ほどのように魚が水面を見ている気がしないので、再び沈む毛鉤をセレクトしてポイントに落とし込むも全く反応なし。
ここでは友人のエサ釣りに分がありました。渓が狭いためポイント毎に交代で探っていきますが、ナカガワさんがエサのミミズを投入すると直ぐに目印がすーっと動き、アワセを入れるとロッドがしなります。まさにワンツースリーのリズム。
釣れてきたのは黄色い体色のイワナでした。ネイティブと思いたいですがこれは見分けがつきません。
この沢をこれ以上探るのは体力的にきついので、早々に撤退することに。
因みに、帰宅後「山と高原地図26 (2019年 雲取山・両神山)」を確認したところ、登山道入口から35分ほどで沢と登山道が離れていき、終点は沢の上流とは全く違う方角でした。ちょうど私たちが釣り始めた地点が分岐点のようです。
今回はたまたまツイていましたが、あのまま進んでいたらどうなったのか少し肝の冷える思いがしました。もう少し地図読みにも精通する必要がありそうです。
エピローグ
時は既に15:30を過ぎ、ようやく登山道入口に辿り着きました。
県道210号を横断すると私たちも車を止めている広い駐車スペースがあります。
そこから中津川の本流に降りられるので、そこでこの釣行を締めくくることに。
一縷の望みを託してロッドを振るものの、劇的なフィナーレはありませんでした。
放流ヤマメが数匹泳いでいるのを確認しましたが、ほぼ反応なし。
巷では高校生に扮したGACKTさんが活躍する映画等でちょっとした埼玉ブームに沸く昨今ですが、秩父の渓流魚たちはそこまで翔んではいなかったようで・・・。
(おわり)