【幕営釣行】2025年7月 S沢幕営釣行

【プロローグ】
昨年9月の幕営釣行では散々な目に遭ったため、今回はなるべく楽に釣行することを主眼とし、目的地を選定しました。
前回の標高差400メートルに及ぶ山越えに懲りた私たちは、選定基準として、沢からそれほど遠くない距離に登山道があることを挙げて候補地を絞り込んでいき、最終的に国土地理院の1/25000地形図で等高線の幅などもチェックし、入退渓が比較的容易と思われた某県N川支流のS沢をピックアップしました。
今回は、いつものナカガワさんに、渓流釣りは20数年ぶりのオオヤマさんを迎えた3名での釣行です。
オオヤマさんはようやくお子さんが手を離れたとのことで今回の参戦が実現。しかし、当然ながら20数年のブランクはなかなか埋めがたいと思われました。
そこで、曲がりなりにも約30年渓流釣りを続けてきたナカガワさんと私で、オオヤマさんへの万全のサポート体制を敷く必要があります。
その意味でも、今回の幕営釣行は難易度低めである必要がありました。
【1日目】
6:30にナカガワさん宅に集合し、現地まで約2時間のドライブ。
前回の反省を生かしたかなりユルめな計画は、当初は成功間違いなしと思われました。
しかし、そんな楽観に文字通り水を差したのが当日の現地の天気予報でした。
お昼頃から雨が降り始め、15:00には1時間の降雨量が3㎜に達するとの何とも無慈悲な予報。3㎜は体感的には超土砂降りで心が折れるレベルです。
当初は沢伝いに釣り上がりながらテン場に向かう予定でしたが、車中での会議で、登山道を利用して早めにテン場に到着してタープ等の設営を終え、豪雨になる前に食料(岩魚と山菜)の調達を終えることになりました。
8:20頃、登山道のゲート前に到着し、身支度を整えて8:40に行動開始。
林道は若干のアップダウンはあるものの、20㎏超(前回より多少軽くなりました)の荷物を背負って歩いても普通にこなせる程度でした。
問題はどこから沢にアクセスするかですが、1187のピークまで行ってしまうと下降距離が長くなりそうだったので、ピークより少し手前、川までの直線距離が一番短いポイントをチョイスしました。最後らへんの等高線が狭いのがとても気になりますが・・・。
9:52に1088地点から下降を開始すると、体感的にはやはりかなりの急勾配。
しかしパワーロープなどの登攀具は持参していないので、自力で何とかするしかありません。
木の枝や草付、土の斜面の僅かな凹凸など、下降に利用出来そうなものを総動員し、基本の三点支持でゆっくりと下降し、無事河原に降り立つことが出来ました。

出来るだけ時間を稼ぐため、休憩もそこそこに上流に向け出発。
11:51、1066メートル地点でテン場に良さそうなスペースを発見。
さっそく地面を整地し、木と木の間に5㎜の細引きを渡してアライテントのビバークタープLを張ります。
私はタープの下にマットを敷いてシュラフカバーで寝るつもりですが、ナカガワさんはツェルト、オオヤマさんはコンパクトな1人用テントを設営していました。
各々の寝床を確保したところで、次は薪集めです。
天気予報によると、15:00頃の土砂降りのあと18:00には雨が止む予想。運が良ければ河原で焚き火調理が出来そうですが、最悪タープの下で火を小さくしてでも焚き火はやるつもりでした。
そのため、雨が降る前に乾いた薪を集める必要があります。
3人で手分けして大・中・小の枯れ木を拾い集め、雨の影響を受けにくいタープ下の中央へ格納しました。
そして肝心の腹ごしらえ。
ナカガワさんのジェットボイルで沢水を沸かして袋麺を2つに割って投入して煮るという作業を3回繰り返し、あっという間に3人分の即席味噌ラーメンが出来上がりました。

いつもながらジェットボイルのタイパは素晴らしいと感心。
必要な作業を終え、13:00頃に釣り開始。
猶予は僅か2時間ほどと思われたので、効率良く食材を調達するためテン場を中心に私が釣り上がり、ナカガワさん&オオヤマさんペアが釣り下がりと二手に分かれることにしました。
空は分厚い雲に覆われ今にも泣き出しそうでしたので、一刻も早く食材をゲットしないと宴がとても質素になりそうです。
テン場のすぐ下流に大きめのプールがあり、ナカガワさんが竿を出すといきなり刺身サイズの岩魚がヒット。難なく取り込み、まずは1匹目の食材ゲット。
向こうのチームは幸先の良いスタートを切ったようです。
これは負けていられないと張り切って釣り上がっていきましたが・・・。
私の竿には一向に生命反応なし。徒に時間ばかりが過ぎて行きます。
時計を見るとリミットの15:00まであと10分もありません。
しかし、懸念していた天気のほうも崩れそうで崩れないという、危うい均衡を保っていました。
これは、降らないのでは?天気予報外れたのでは?と都合よく解釈し、釣りを続行することに。
とはいえ諸々の支度を考えると16:00にはテン場に戻らないといけません。
何とかゼロは回避したいと手を変え品を変え必死の思いで取り組んだ結果、ミミズのエサ釣りで刺身サイズを、テンカラの毛鉤でぎりぎりのキープサイズを1匹ずつゲット。

岩魚の楽園には程遠い状況でしたが、何とか言い訳の立つ釣果に一安心。
16:00頃にテン場に戻ると、他の2人はまだ戻って来ていませんでした。
私同様に雨が降らないと読み、釣りを延長しているようです。
サーマレストのマットの上で着替えを済ませ、しばらく休んでいると、ナカガワさんが戻ってきました。
彼の話では、幸先は良かったものの、全体的には渋い状況で釣果は3匹。
オオヤマさんはブランクが響いて釣果を得られず、よほど悔しいのかまだ粘っているとのこと。
16:40頃、オオヤマさんがなかなか帰ってこないのを心配し、ナカガワさんが様子を見に行こうとした矢先、がっくりと首を項垂れて彼が戻ってきました。
釣れなかったのは残念でしたが、ケガで動けなくなったわけではなかったので一安心です。
釣果は5匹。予定よりはかなり少ないですが、私たちには慎ましく自然の恵みを頂くくらいが丁度良いのかもしれません。
天気予報は私たちに都合よく外れてくれました。
夕方まで雨が降ることはなく、河原で焚き火を囲んでの宴に支障は無さそうです。
火起こしではオオヤマさんが大活躍。食材集めの不振の鬱憤を晴らすように見事な炎を示現させていました。

ちなみに着火剤はエスビット。ドイツ軍の標準装備との触れ込み通りこれはかなりのスグレモノです。バーベキューでの着火剤としても最適ではないでしょうか。
その頃、ナカガワさんは1匹目を釣った広めのプールで気持ちよさそうに水浴びをしていました。

調理のほうは、良型の2尾を刺身に、残りの3尾は大きい方から順に2尾を塩焼き、最小の1尾を玉葱のホイル焼きの具材としました。はらわたも洗って湯通ししてポン酢で和えていただきます。

また、炊飯のため長い枯れ木を針金とナイロンテープで括り、即席の三脚を作りました。

三脚の支点が炎の中央に来るように三脚を設置し、三脚の中央に針金で焚火缶をぶら下げて炊飯。
焚き火での炊飯は難しいと聞いていましたが、案外美味しく炊けました。
また、三脚には刺身にした岩魚の頭と骨をぶら下げて焼き枯らします。これはもちろん骨酒用。

夏の山菜の代表格であるミズをお浸しにする計画でしたが、テン場付近には見あたらず。
準備の良いナカガワさんはその想定もしていたようで、自家製のインゲンを持参していました。インゲンのお浸しもなかなかいけるとのこと。
すべての調理を終えて綺麗に並べてからさあいただきますとはならず、調理をしつつ出来たものから食べ、その間にお酒も飲むという状況でしたが、昨年の九死に一生の状況からは格段に進歩。
腰を落ち着けて焚き火を眺める頃には料理はすっかりなくなり、市販の乾き物や缶詰をつまみにワンカップ大関を注いだ骨酒を頂くこととなりましたが、十分に満足できる宴となりました。

【二日目】
5:30に目を覚ますと、ナカガワさんがすでに朝食の準備に取り掛かっていました。相変わらず早い・・・。
そしてオオヤマさんも初源流泊の疲れなどないようで、機敏な動きで準備を手伝っています。
私の目覚めも決して遅くはないと思うのですが、沢では朝寝坊扱いされる理不尽。
朝食はオオヤマさんが用意してくれたレトルトカレーです。
私は、働かないのに飯だけ食いやがって的な揶揄を受けながらも美味しく完食。
朝食の片付けを終えた頃、ついに空から雨が降ってきました。
空は明るくそれほど長い時間は降らないだろうと思われたため、雨が止むまでタープの下で待機することに。
私はサーマレストのマットの上でゴロ寝です。ナカガワさんもレジャーシートに体を横たえて様子を見る構えでしたが、オオヤマさんはソワソワしているように見えました。
半時ほど待っても雨脚は弱まる気配はありませんでしたが、ついにしびれを切らしたオオヤマさんがやにわに合羽を着込み、釣り竿を握り締めて「ちょっと行ってくる」と言い残してタープを出て行きました。
その気持ちは痛いほどよく分かります。
さらに半時後、オオヤマさんががっくりと首を項垂れて戻ってきました。
釣果なしなのはすぐ分かりましたが、その直後に彼からもたらされた情報を耳にし、まったりモードだった私たちはスイッチを切り替えざるを得ませんでした。
オオヤマさんが出発する直前、人が入渓していて上流へ歩いて行ったとのこと。
私たちは横になっていたのでその姿に全く気付きませんでした。オオヤマさんはおそらく長いブランクのため先行者の存在が何を意味するかを忘れていたようです。
それ先に言ってよ~とぼやいてみても後の祭り。
雨は小降りになっていました。私たちの選択肢はポイント移動一択です。
ヤマップを参照しつつ登り易そうなルートを選定して登っていきますが、体の重い私は登りが大の苦手。
他の二人が軽快に直登するルートを私は登れず、ゼエゼエと息を切らしながら、斜め上方3メートルほど先に大木の生え際などのポイントを見つけ、休み休みしつつジグザグに進んで行きました。
二人に遅れること実に15分。
二人はニヤニヤしながら、「まあカジくん(私カジワラ)は荷物も重いししょうがないよね~」と心にもない労いの言葉。
その瞬間に私がダイエットを決意したことは言うまでもありません。
無事にS沢を後にし、U川の本流へ移動しました。
U川は開豁な流れでテンカラ竿を存分に振ることができます。
しかし、残念ながら釣果は得られず。
ただ、ポイント付近にはミズが群生しており、ところどころにミツバも生えていました。


昼食時にはミズをお浸しにし、袋麺にはミツバを投入。

ミズのシャキシャキとした歯応えと薫り高いミツバの袋麺の味が、釣果なしの悔しさを帳消しにしてくれました。

【エピローグ】
U川エリアのA沢でヤマビルに遭遇しました。
オオヤマさんが首に吸い付かれ、気付いた時にはヤマビルが丸々と肥えていました。
軟膏とバンドエイドで手当しましたが、止血までかなりの時間を要しました。
そんな目に遭いながらも、「楽しかったし次回は必ず釣りたい」と言ってくれるオオヤマさん。
翌日、そのことを思い返し、「いいヤツだな~、次は絶対釣ってもらいたいな~」と思いながら渓流タビを洗っていたら、タビの何処かにヤマビルが潜んでいたらしく、私も右手首を吸血されてしまいました。

ヤマビルに吸血されるとなかなか血が止まらないことを私も身を以て実感することになるとは夢にも思いませんでした。
次回以降、釣り場の選定には、「ヤマビルのいないところ」という項目を加えようと心に誓いましたが、実際にはどうなんでしょうか・・・。
(おわり)
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