【渓流釣り】2020年9月 大人の遠足 奥会津・檜枝岐でテンカラ釣りと山人の裁ちそば
プロローグ
友人ナカガワさんからオファーを頂き、万障繰り合わせて彼とは実に十数年振りの泊まりがけの釣行が実現しました。
目的地は、若かりし頃に通い慣れた福島県奥会津に位置する檜枝岐村です。
東北自動車道久喜ICを利用するため、埼玉県のJR久喜駅で待ち合わせ。私は自宅から電車で赴き、ロータリーでナカガワさんの愛車に乗車。
ここから檜枝岐村まではおよそ4時間のドライブです。
時間が経つにつれ、徐々に若き日の高揚感が甦ってきました。
当日は天候が心配されましたが、目的地付近では雲間から青い空が顔を覗かせ、道路に設置された温度計によると気温は30℃近くあるものの、湿度の低い空気は「爽やか」の一語に尽きます。
10:30頃に現地到着。
まずは平野商店さんで日釣券を購入。管轄は檜枝岐村漁業協同組合で、料金は1日あたり1050円でした。
1日目
民宿・お食事処 開山
檜枝岐村といえば、郷土料理「裁ちそば」がつとに有名です。檜枝岐村は標高約1000m、川沿いの細長い寒冷地で、周りを2000m級の山々に囲まれています。
そのため昔から稲作が出来ず、粟・稗などの雑穀類しか食べられなかったとのこと。
そのような条件のもと、そばは栽培が楽でしかも良質であったため、そば粉に様々な工夫を施して食べてきた歴史があります。
村で採れたそば粉を使ったそばは繋ぎを一切入れず、熱湯と水だけで捏ね上げ、2㎜くらいに薄く熨したものを何枚も重ねて、手を定規にして包丁で引き切ります。
その切り方が布を裁ちきる様に似ていることから「裁ちそば」と呼ばれるようになりました。
さて、まずはこの「裁ちそば」で腹ごしらえをしたいところですが、周辺のほぼ全ての飲食施設は11時営業開始のようです。
まだ少し早かったのですが、美味しい裁ちそばがいただけると評判の「民宿・御食事処 開山」さんに電話で問い合わせたところ、「2名様大丈夫です」との有難いお返事。
早速お邪魔しましたが、2018年に全館リニューアルしたとのことで、店内はとてもきれいで落ち着いた印象。
清浄な空気の心地よい窓際の座敷で、実川の清冽な流れを眺めつつ裁ちそばとキノコの刺身をいただきました。
裁ちそばは細いながらもコシのあるさっぱりした味わい。キノコは貝のような食感でどちらもとても美味しかったです。
冗談抜きで日本酒が飲みたくなりましたが、ここはぐっと我慢・・・。
道行沢
今回の旅はある意味懐古趣味の旅なので、フィールドは思い出深い道行沢と硫黄沢を含めようと決めています。
まずは道行沢を目指すべく、七入山荘の裏手の道の駐車スペースに車を止めます。
私たちは長年、このエリアの釣行の際に七入山荘の外観を幾度となく目にしてきました。主に尾瀬登山のお客さまが利用するこの宿の評判はとても良いようです。
「尾瀬入山口の宿 七入山荘」のご予約はこちら逸る心を抑えつつ、山岳渓流用の足回りを固めます。
フェルト底のウェーディングシューズにネオプレーン製のソックスとスパッツ。
肌の露出を防ぐためのタイツの上に水着を重ねるというウェットウェーディングスタイルです。
夏の渓流にはこの装いがよく合います。硫黄沢に掛かる木製の橋を渡ると、本格的な登山道に入ります。
この登山道は福島県側では沼田街道、群馬県側では会津街道と呼ばれ、その昔会津と上州を結ぶ交易路とされていました。
福島県観光情報サイト「ふくしまの旅」によると、登山道には木道が敷かれておらず、人が少なく、新緑・紅葉の時期ともに素晴らしい景観を見せているとのことですが、今回私達が歩いた晩夏の景観もまた趣深いです。
木漏れ日の降る森の中を、熊よけ鈴の怜悧な音色を響かせながら進んで行きます。
途中、赤法華沢を通過。
そこから5分ほど歩いて道行沢一番橋に到着。
しかし、少し先の登山道は崩落していました。
登りのややきつそうな迂回路が設けられていましたが、進むのを諦めて入渓。
二番橋付近まで釣り上がりましたが、水量が少ないためか大苦戦でした。
この区間ではエサ釣りのナカガワさんの自家製シマミミズに20㎝ほどの金色イワナが1匹ヒットしたのみ。
テンカラ釣りの私の毛バリには全く反応なし。
道行沢をあきらめ、迂回路を経由して硫黄沢まで戻ります。
釣果には恵まれなかったものの、爽快な森林浴に心が癒やされました。
登山道をただ歩くだけの動画を撮影していますので、お時間ある方はご覧いただければと思います。
硫黄沢
沼田街道硫黄沢橋周辺の下流部を探釣しました。
私は堰堤回りに点在するポイントに毛バリを打ち込んでいきます。
この堰堤の上部はかつて十分な水深がありましたが、いまは多くの部分が砂に埋め尽くされて、最奥の落水部にわずかにポイントを残すのみとなりました。
堰堤の深場に尺イワナが棲息していたことを思い出しつつ、少し寂しい気持ちでテンカラ竿を振り続けましたが、しかしまだ残されたポイントにはしっかりイワナが棲んでいます。
毛バリを水面のやや下に沈めて流すので、アタリはレベルラインの変化を読み取ることになります。
突如ラインが落水部に形成された白泡に向かって勢いよく動いたため、シャープに竿を煽ると・・・掛かりました!
強めのアワセにも関わらず空中に抜き上げられないところをみると、小イワナではないようです。
なかなかに良いファイト。30秒ほどやり取りを楽しんだ後に対面したのは、綺麗な薄紫色の体色をしたスマートな体型のイワナでした。メジャーで体長を計測すると、22㎝でした。
例によってその麗しい姿を記念撮影し、楽しませてもらった感謝の念とともにリリース。釣果はこの1匹のみ。
しばらくして、堰堤より下流を探り終えたナカガワさんがやって来ました。釣果は4匹とのこと。
たいてい彼のほうが釣果に恵まれるのも、昔から変わっていません・・・。
ロッジ渓山
今回の旅の趣旨において、今宵の宿は「ロッジ渓山」一択です。
かつて別荘のように利用していたその宿に17:00頃到着し、ご主人と奥様にご挨拶してチェックイン。
風呂上がりのビールとサービスしていただいたおつまみの行者ニンニク、最高です。
平日のため私達の他にはクワガタ灯火採集のお客さまがおひとりだけでした。
このお客さまはこの日の晩、ロッジ渓山の「灯火採集パック」を利用して、オオクワガタをペアで採集することに成功しました!
夕餉のメインディッシュは鹿肉ステーキです。全く臭みのない上品な味わいは白米によく合います。
鹿肉ステーキと白米を存分に堪能したあとは、日本酒「会津」の盃をゆっくりと傾けていきます。
程良く酔いの回った私達は饒舌になり、昔話に花の咲く夜が更けてゆきます。
久しぶりに食堂での優雅な宴を楽しみましたが、22:00までお付き合いいただいたご主人と奥様には大感謝とともに、クワガタのお客さまとは違ってかなりお手間をかけさせてるかもとちょっと反省・・・。
2日目
今後さらに訪問の機会を増やすことを約束して宿を発ちます。
見通川
この日の目的地は見通川で、こちらも檜枝岐漁協の管轄です。
車道が川に沿っているため、入渓は非常に容易ですが、その分かなり釣り人も多い印象です。
この日は道端にテントを張って野宿をしている釣り人もいました。
賑わいを見せる見通川本流に入り込む余地をなかなか見出せなかったため、まずは本格的な釣り人は見向きもしないであろう見通川の支沢の小堰堤を探釣。
上方から堰堤下のポイントを覗き込むと、数匹のイワナが泳いでいるのが見えました。
早速、準備を整えて毛バリをポイントに打ち込むと、すぐにラインが大きく動きました。
軽くアワセると首尾良くフッキング。
次の瞬間に水上に抜き上げられたイワナは、体を大きくくねらせながら宙を舞い、あっと言う間に私の手中に。
体長はキープサイズぎりぎりの15㎝。
ナカガワさんは、今日収穫した山の恵みのうち、ご家族の人数分のみ持ち帰りたい意向だったようですが、さすがにこの大きさでは献上するには至らず。
その後、やや下流に戻り、竿抜けしてしていそうな区間を見つけたので入渓。
ここでは私の毛バリに再度反応があり、20㎝のイワナ1匹を追加。
一方、エサ釣りのナカガワさんはこの日は苦戦していました。この日の見通川のイワナは、川底付近を流れるシマミミズにはあまり興味を示さなかったようです。
今回のテンカラ釣りのヒットシーンを動画撮影していますので、興味ある方はご覧いただければと思います。
(渓の翁・瀬畑雄三氏とテンカラ大王・石垣尚男先生出演の「TENKARA」はテンカラファンにとって一見の価値ありです👇)
エピローグ
その後、フィールドを南会津西部漁協が管轄するエリアに求め、安越又川、小滝川、黒谷川と探りましたが、極小サイズの魚がパラパラと出る程度で思うような成果は得られませんでした。
13:30に納竿。
旅の締めくくりに「秋華」というお店で昼食をとることに。
このお店は埼玉県さいたま市の保養施設である「ホテル南郷」の近隣に位置しています。夜は酒類の提供を行う居酒屋としての営業を行っているようです。
到着は昼の営業終了時間の14:00を少し回っており、「準備中」の札が掛けられていたものの、交渉すると「2名様なら大丈夫です」との有難いお返事をいただき無事入店。
私は人気メニューの担々麺をオーダー。程良い辛みが疲れた体に元気を呼び戻してくれました。
万障繰り合わせて実現させた1泊の釣行は、短かった今シーズンの締めくくりとして最高のイベントだったと感じていますが、渓流バカの私は心の何処かで、「あわよくばもう1回」を狙っているようないないような・・・。
(おわり)