【子供と釣り】2019年7月 南会津 子供と楽しむクワガタ灯火採集と渓流釣りの旅
プロローグ
クワガタ採集。多くの男の子が一度は夢中になるその崇高な娯楽は、深みにはまると大人になっても抜け出すのは容易ではないようです。
幸か不幸か私は今のところクワガタ採集を生涯の趣味とするに至ってはいませんが、今回は小学生の下の子の「クワガタ採り行きたい!」との強い希望があったため、夏休みの宿題の自由研究の題材になるかもしれないと思い、福島県南会津で灯火採集に挑戦することにしました。
以前から渓流釣りを中心にお世話になっていた宿「ロッジ渓山」が、最近は「灯火採集パック」という宿泊プランでクワガタファンのハートを鷲掴みにしているようなので、このプランを体験させて頂く算段です。
上の子は中学生になり夏休みの部活を休ませるのは気が引けるので、今回は嫁とお留守番してもらうことに。
斯くして下の子と親子二人旅の運びとなりました。首都圏から南会津まで車で片道約5時間の行程を一人で運転して行って帰ってくるのはなかなか骨が折れますが…。
今回の旅のアクティビティは、クワガタの灯火採集をメインとし、他にカジカ捕りと渓流釣りをやろうと目論んでいます。
天候が心配されたものの、当日の南会津は薄曇りながら何とか外遊びをさせてもらえそうでまずは一安心。
AM8:00に自宅を出発し、東北自動車道を北上して西那須野塩原ICを降り、会津西街道に入ります。
会津らーめん「みのや」
AM11:00頃、20年以上前より南会津旅行の際には必ず立ち寄ると行っても過言ではない会津ラーメン「みのや」さんで昼食。変わらぬ優しい味に舌鼓を打ちます。
カジカ釣り
現在も家族連れで毎年欠かさず南会津に通う友人ナカガワさん(仮名)より場所等ご教示いただきました。
カジカ釣りは、伊南川本流と支流A川の合流点付近が良いのではとのことでした。
13:00頃現地到着。子供は水着にアクアシューズ、手には箱メガネとオリジナルカジカ竿というスタイルで臨みます。
私も水着に着替え、アシスタントとして箱メガネでカジカを見付けて場所を教える兼エサの川虫を捕獲してハリに付ける係を受け持ちます。
しばらく探索を続けますが、ちょっと時期が早かったか、見付けた個体はかなり小さめで、鼻先にエサを持って行っても針掛かりさせることが出来ませんでした。
しかし、子供と一緒に箱メガネで水中を覗いた折に、カジカがいそうな岩の隙間から、カジカではなく岩魚が飛び出す瞬間というなかなかに稀な映像を目にすることが出来ました。
気温は30℃に届かず、体が冷えてきたため、カジカ釣りを終えます。
結果としては一匹も釣れませんでしたが、「鰍」は文字通り秋の魚なので、お盆を過ぎるとグッドサイズに出会えるのかな?
ロッジ渓山
服を着替えて今宵の宿「ロッジ渓山」を目指します。
若い頃、渓流釣りのベースとして本当に頻繁に(そして冬のスキーのベースとしてはごく稀に)利用させていただきました。
渓流釣りのシーズンには友人達と夜な夜な居酒屋に集合し、「今度いつ渓山行く?」と話し合っていたのを昨日のことのように思い出します。
宿の魅力は多々ありますが、個人的にはお料理が出色であると感じます。ふっくらと焼き上がった岩魚の塩焼きや、焼き枯らした岩魚に熱燗の日本酒をなみなみと注いだ骨酒、春の山菜、秋のキノコ、熊鍋、鹿肉のステーキetc.
山の恵みに彩られた食卓で、たまたま居合わせた利害関係のないお客さま達との取り留めのない山談義・釣り談義は、当時の自分の心の支えですらありました。
その後自分を取り巻く状況が変化し、私は永らくご無沙汰していましたが、最近また少しづつ訪問の機会を得て今回の運びとなりました。
15:30のチェックインに合わせて到着。宿の運営は近年、クワガタ採集のお客さま向けになっているので、以前のような振る舞いは厳に慎む必要があると心得ています。
現在のお客さまの一般的なビヘイビアは、18:00からの夕食を手早く済ませ、投光器の入ったコンテナと三脚を持って、宿で予め予約して頂いた採集場所(スキー場の駐車場など)へ素早く出発し、灯火採集の制限時間である23:00ギリギリまで粘り、その後宿に戻るというもののようです。以前はその後も明け方まで外灯回りなどの採集を続けるお客さまがいたため、安全管理の観点から24:00の門限を導入したとのこと。
かつて、夕食が終わるとほとんどのお客さまが食堂に残り、各々好きなお酒を片手に山談義・釣り談義に花を咲かす大宴会となっていた頃にお世話になっていた身としては、隔世の感があります。
とはいえ、お料理の美味しさは少しも変わることなく、遊び疲れた心身を癒し整えてくれます。
クワガタ採集のお客さま向けには当然ですが食前酒は供されません。そして今宵のメインは熊鍋です。柔らかくぷるんとした食感が肌のきめを整えてくれるような気がします。鮎の塩焼きはふっくらと焼けており、頭から丸かじり出来ます。
山料理なので、小学生の口に合わないのではとの私の心配をよそに子供も完食。食後の一言は「熊おいしい!」
クワガタの灯火採集
私たちも宿の奥様から機材の説明を受け、いざ出発です。
私たちの採集場所は、小豆温泉せせらぎオートキャンプ場レッドビーン管理棟前の駐車場スペース8番エリアでした。
お隣の9番エリアでは、宿の食堂でお隣だったご夫婦が手早く準備を済ませ、4筋の灯光をスノーシェッドの先の山に向けて走らせています。
私たちもお借りした2台の投光器のセッティングを終え、お隣のスペースに光が侵入しないよう留意しつつ、お隣とは反対側の山に向けて灯光を走らせます。
伊南川の豊かな水量が流下する瀑音と、林間に姿の見えぬ虫たちが涼やかに奏でる楽器の音が調和する紫紺の闇の世界を、突如として直線的な人工光が攪乱した次の刹那に、夥しい数の蛾の乱舞が始まりました。
偽りの月光に群がる蛾たちが大小様々に白く照り輝く様は幻想的ですらあり、脳裏には、夭折の天才画家・速水御舟の「炎舞」がよぎりさえしました。
しばらくすると、ライトの周りには蛾に混じってクワガタの飛来が見られるようになりました。待ち焦がれた瞬間に子供は大喜びです。
しかし、ここではたと自分がミスを犯していたことに気が付きました。
クワガタが着地する地点はライトの至近の明るい場所だけとは限らないため、探索用に懐中電灯を持参するべきでした。
また、野生のクワガタを素手で掴むと脚の突起やハサミで怪我をする可能性があるので、手袋も必要です。
問題に直面して初めて気が付くことは多々ありますが、それにしても私は甚だしく準備不足でした。と言うよりは、ほぼ丸腰です。
しかし、その様子を見かねていたのか、お隣のスペースのご主人に声を掛けて頂き、懐中電灯をお借りしたり、採集にまつわるアドバイスを頂けたのは本当に幸運でした。
21:30頃。灯火採集のリミットは23:00まででしたが、子供に疲れが見えはじめ、また小雨が落ちてきたため、ここが潮時とみて撤収を決めます。
採集した個体の数は正確には数えていませんでしたがざっと20匹といったところでしょうか。
全部持ち帰っても世話が出来ないので、ミヤマクワガタのオス2匹と、種類が何なのかよく分かりませんが大きめのメス3匹をキープし、他の個体はリリースしました。
自宅に戻って子供に急かされつつクワガタ飼育の環境を整えている時に初めて気が付いたのですが、持ち帰ったメスの内の1匹はどうやらオオクワガタのメスだったようです。
ビギナーズラックとは本当にあるのだなと妙に感心してしまいました。
こうなると念のため産卵に向けた環境を準備したほうがいいのでしょうね、きっと。
子供に岩魚は釣れるか
2日目。名残を惜しみつつ宿を後にします。
今日は子供にエサ釣りで岩魚を釣ってもらう計画です。先日友人ナカガワさん(仮名)に譲って頂いた子供用ウェーダーを用いて容易な入渓点から入渓し、サクッと釣り上げようとの目論みです。
ポイントは予めナカガワさん(仮名)にご教示頂いたM川のとある入渓点です。
入渓点のすぐ横に車を止めるスペースがあります。
そこは上部の落ち込みとその下の二段堰堤で構成されていて、本格的な釣り師は歯牙にもかけないでしょうが、コンパクトにまとまっていて子供の練習には最適と思えました。
早速子供の身支度を調えて竿を持たせます。
道具立ては極めてシンプルで、3.6mの安価な渓流竿に1号1mのレモンイエローの天井糸を接続、そこから更に0.6号のハリスを1.5mほど延ばし、内掛け結びで7号のヤマメ鉤を直結します。オモリは3Bを用いました。エサはブドウ虫です。
見るからに魚が着いていそうな渓相で、一発で食ってくるものとの確信を裏切って水中からの魚信は得られずじまいでした。
子供の忍耐は30分が限度のようで、「釣れないね、もうやめようよ!」
今回は残念ながら子供に岩魚は釣れませんでした。
エピローグ
初めての親子二人旅でしたが、子供は長時間のドライブに飽きることもなく落ち着いた様子でした。
宿でも子供は彼一人でしたが、緊張した様子もなく楽しそうに過ごしていて、親としては成長したなぁと感慨にふけることしきり。
全て計画通りの成果が出たとは全く思っていませんが、願わくは今回の旅が彼にとってずっと良い思い出として記憶に残り続けてくれるといいなと思います。
(終わり)